女性司法書士×女性税理士 対談


「~2024年4月1日相続登記義務化スタート~」


~過料罰則あり!?相続にまつわる関連知識~


相続登記義務化スタート

相続登記義務化スタート


2024年4月1日に「相続登記義務化」の制度がスタートしました。
政府は、「所有者不明土地」の解消に向けて不動産登記制度の見直しを行い、当該制度がスタートして半年が経過したのですが、実情はどうなのでしょうか?
不動産が動くときには、税金問題も発生することが多々ありますので、決して税理士も無関心ではいられません。今回は現状を踏まえて相続にまつわる関連知識を女性司法書士の櫻井先生の視点からのご教示をお願いし対談させて頂くことになりました。
満を持しての対談となり、どんなお話をお聞きできるのか楽しみで仕方がありません!
では、はじまり、はじまりです~(*‘ω‘ *)♪


※参考URL




女性司法書士 櫻井 麻衣

司法書士・行政書士
〒810-0041
福岡市中央区大名1丁目15番30号
天神ミーズビル403号
Tel:092-707-2722 Fax:092-713-7227
Mail:sakurai.m67■gmail.com(送信の際は、■を@に変更ください)



女性税理士 安武 貴美子

【資格】
九州北部税理士会会員  税理士
ファイナンシャル・プランニング技能検定1級




1.女性司法書士×女性税理士
~カジュアル対談!?~

1-1.イントロダクション

(櫻井先生 以下「櫻井」とさせていただきます)

某日、某所。


安武「櫻井先生、こんにちは!ご無沙汰しております。」

櫻井「こんにちは!わたくしこそ、ご無沙汰しております。」

安武「本日は、ご多忙の中お時間を割いていただいた上に対談までご快諾頂き誠に有難うございます!」
「今回は、女性司法書士の視点から業界のトレンドを中心に色々とお伺いできたらと大変楽しみにしておりますのでどうぞよろしくお願い致します。」

櫻井「いえいえ、こちらこそどうぞよろしくお願い致します。」

安武「早速ですが、本日はカジュアルな対談ということで、最初に櫻井先生のプロフィールを少しお尋ねしてよろいしでしょうか?」

櫻井「はい。どうぞ(笑)」

安武「櫻井先生のご出身は?」

櫻井「はい、私は、久留米市出身なのです。」

安武「では、純粋な福岡県民ですね!?因みに、安武は福岡市生まれの北九州市育ちの純粋な福岡県民です。(笑)」
「櫻井先生、大学は県外だったのですか?」

櫻井「いえいえ、福岡市内の大学だったのですよ。」

安武「そうなのですね!では、櫻井先生、ズバリ何故、司法書士になったのですか?」

櫻井「(笑)理由を全部お話すると長くなりますので、ざっくり要約しますと大学時の学部が「法学部」だったからでしょうか。(笑)」

安武「なるほど、法学部でいらっしゃったのですね。では、在学中に将来をお決めになった感じですか?」

櫻井「そうですね、その時は漠然として法律に関わる仕事がしたいという思いがありましたので、その中の選択肢に「司法書士」があったという流れになります。」

安武「なるほどですね。と言うことは、大学卒業後は真っ直ぐに「司法書士」の道へと歩まれたのですか?」

櫻井「いえいえ(笑)、まずは、卒業後は司法書士補助として働き経験を積み、行政書士資格取得してから、そして次は司法書士資格取得へと徐々にステップアップしながらの道のりとなりました。」

安武「おおっ、しかしながら、お見事に、平均合格率4~5%の難関試験の合格はすごいことですね!」

櫻井「(笑)ありがとうございます(笑)でも、中々の紆余曲折で四苦八苦でしたよ。
とは言え、安武先生も難関資格をクリアされていらっしゃるではありませんか?」

安武「いえいえ、こちらは科目合格制なので、「一発合格」の圧力がある司法書士試験の方が断然ハードルが高いですよ!」

櫻井「(笑)そうですか?・・ありがとうございます。(笑)」

安武「櫻井先生、ベタな質問で恐縮なのですが、試験合格の秘訣はズバリありますか?」

櫻井「そうですね、敢えて言いますと、「諦めずにコツコツと勉強を継続する」ことでしょうか。陳腐な回答ですいません(笑)」

安武「ふむふむ。やっぱり「学問に王道なし」なのですね!ありがとうございます!」




1-2.司法書士界のトレンドは?

安武「さて早速ですが、櫻井先生、司法書士界のトレンドを教えて頂いてよろしいでしょうか?」

櫻井「はい、最近のトレンドはやはり令和6年4月1日施行されました相続登記の申請の義務化となりますね。」

安武「あっ、話題になった改正ですよね。確か、相続登記を促進させるために義務違反した場合には、過料が科せられる制度ですよね?」

櫻井「はい、おっしゃるとおりです。施行前もご相談はあったのですが、制度スタート後はさらにご相談が多くなりましたね」

安武「過料のインパクト大ですね!」
「ところで櫻井先生、過料の金額はどのくらいになるのですか?」

櫻井「10万円以下の範囲内で裁判所において決定されます。」

安武「う~ん、決して安い金額ではありませんね。」

櫻井「そもそも相続登記は任意でしたので、諸事情により登記をされない方がいらっしゃり、そのような要因で登記簿を見ても所有者が分からない『所有者不明土地』が全国に増加して、様々な社会問題が顕著となってしまい、それらの発生を抑制することがこの制度の目的となります。」

安武「なるほど。櫻井先生、そもそもなぜ相続登記をしない方がいるのですか?」

櫻井「理由は様々ですが、例えば相続した不動産に経済的価値が低いと登記をしようという積極的意識は希薄になってしまいますよね。」

安武「う~ん、確かに・・・。登記するにも、登録免許税やら、司法書士の先生に手続きを依頼したら報酬など、結構色々と費用が発生しますから、相続した不動産が、収益物件とか売却可能なものなら将来に費用の回収は見込めますけど・・。他に金融資産の相続がなく自己からの持ち出しとなると現実的には厳しい状況になるかもしれませんね。」

櫻井「はい、それだけが理由ではないのですが、経済的問題がかなりの比重を占めているのも事実だと思います。」

安武「櫻井先生、相続登記をしないとどのような問題が発生するのですか?」

櫻井「まずは第一に、売買の前には必ず相続登記が必要となり相続不動産の売却が困難になります。」

安武「売却が困難ですか・・深刻な問題ですね。」 「つまり相続登記がなされていない場合は、シンプルに考えますと相続人全員の共有になっている状態ですよね?」

櫻井「はい、原則そうなります。」

安武「ということは、売買するためには『相続登記』が必要となるのですから・・・うん?そうなると、そもそも誰が、当該不動産を相続するか問題となりますね?」

櫻井「はい、おっしゃる通りです。詳細に申しますと、

『・相続人の一部が不動産を相続し、売買する場合

遺産分割協議(全員の意思・実印)→相続登記→売買


・相続人全員の共有とする相続登記を行い、売買を行う場合

相続登記(全員の意思※)→売買(全員の意思・実印)
(※相続人の一部から登記申請するという選択肢もあります)』


の流れとなります。」

安武「えっ、ちょっと待ってください。相続人全員の『意思確認』『実印』ですか?
相続人全員となるとかなり大変なことになりますよね?」

櫻井「はい、相続は時間が経過するほど利害関係者が複雑に絡み合う傾向がありますし
特に、直系血族の代襲相続は際限がありませんから想定外の大変さになったりします。」

安武「うわっ!?まさにねずみ算式に関係者が増えていくということになりますよね!
調査の煩雑さを想像しただけで何とも恐ろしいです・・・(;゚Д゚)w」

櫻井「そうですね、やっとの思いで相続人を洗い出しても、相続人の方が海外にいらっしゃったりして物理的な障壁にあったりもします・・・(^^;苦笑」

安武「まさに一難去ってまた一難ですね・・・」
「櫻井先生、近年は個人情報の規制が厳しいのでご心労ばかりですね・・・」

櫻井「はい、直近でもある方の「相続登記」放置問題に関するご相談があったのですが、この方の場合は諸事情により想定外の利害関係者数が存在し、かつご縁が希薄のため個人情報に抵触する恐れがあるということで、相続人間で協議を行うことが難しいこと、協議がまとまらないこととなり、司法書士は遺産分割の話し合いを取りまとめたり、交渉を行ったりすることができないため、残念ながらお力添えは厳しいとの判断で弁護士の先生をご紹介させていただくことになりました。」

安武「何事も問題の先送りは、良くないということですね?」

櫻井「はい、放置して良いことはありませんので、この度の相続登記の申請義務化を契機に『問題の先送り』ではなく将来を見据えて正面から問題に向き合うようになって頂くことを願うばかりです。」

安武「櫻井先生、それと、不動産の価額が100万円以下の土地であれば『相続登記の登録免許税の免税措置』(適用期限:令和7年3月31日)に該当する可能性もありますので、相続登記に困ったらまずは、町の身近な法律家『司法書士』へ早めのご相談をですよね!」

櫻井「はい、左様です。どうぞよろしくお願いいたします。」



1-3.相続土地国庫帰属制度とは?

安武「今日は、櫻井先生との貴重な対談ですので、先生の職域に係るその他の『相続』にまつわる話も伺ってみたいと思いますが、よろしいでしょうか?」

櫻井「はい、ご遠慮なくどうぞ。(笑)」

安武「ありがとうございます!では・・・(鞄から下記書類を取り出す)」


櫻井「あら!令和5年4月27日にスタートした『相続土地国庫帰属制度』ですね。」

安武「先程の政府の所有者不明土地の発生を抑制するとの趣旨とお話しが被りますが、こちらは、制度開始前にニュースなどで話題になっていましたので以前から気になっていました。可能でしたら実情をお伺いできたらと思いまして・・・」

櫻井「確かに、話題になりましたね。その制度についてご相談はありましたが、まだ、業務として申請等の代行をお受けしたことがないのです。」
「職域の知見の範囲でのお話でよろしければ、ご遠慮なくどうぞ。」

安武「ありがとうございます!」
「では、櫻井先生、法務省のホームページより(一部)なのですが(下記の図解)、 直近の相続土地国庫帰属制度の統計では、申請件数は2,697件の内、国庫帰属になった件数は868件で帰属率は約32%となっています。」
「そもそも申請の対象外(門前払い)である土地を勘案すると帰属率はかなり狭き門と思いますが、いかがでしょうか?」



櫻井「はい、おっしゃる通り決してハードルが低い制度ではありません。」
「しかし、デメリットもあればメリットもありますよね?」

安武「メリットですか(*‘ω‘ *)?う~ん、メリット、メリット?」
「あっ、相続放棄せずに不要な相続土地だけを手放すことができることでしょうか?」

櫻井「はい、もちろんそれもメリットの1つですね。」
「国が引き取り手というのも、実は大きなメリットの1つでもあるのです。」

安武「とおっしゃると?」

井「引き取り相手が国なので安心感があります。」
「不動産を手放すときは、後々のトラブル等を勘案すると『いかに信頼できる人に引き渡せるか』が論点になることが多々あります。」

安武「安心感ですか?」

櫻井「はい、安武先生は『原野商法』をご存知ですか?」

安武「『原野商法』?あっ、はい、多少は存じておりますが、改めてご教示をお願いいたします。」

櫻井「はい、概要となりますが、畏まりました。」
「1970年代から1980年代にかけて『ほとんど価値のない原野や山林』を将来値上がりすると偽り高値で購入させることで被害が多発し社会問題となった悪徳商法です。」

安武「1970年代から1980年代と言えば、バブル期前の高度経済成長期頃のお話ですね。」
「それにしても、酷いお話です・・・」

櫻井「そこで近年『原野商法の二次被害』が急増しているのです。」

安武「えっ、(;゚Д゚)!?二次被害とは、どういうことですか?」

櫻井「はい、安武先生、1970年代から1980年代に被害にあわれた方は現在・・」

安武「あっ!!『相続』が発生している可能が高いですよね!?」

櫻井「はい、ご推察の通り被害にあわれた方の『相続』で相続人が初めて『原野商法の負動産』の存在を知り狼狽されている状況の弱みに付け込む悪徳商法です。」
「必ずしも相続人の方たちばかりが被害にあうことではないのですが、手口のうちのひとつで、当該負動産に関する広告や測量・整地などをすれば『高値で売れますよ!』と持ち掛けて手数料等の名目で金銭を受け取り、その後はなしのつぶて状態などになることです。」

安武「不動産が『負動産』ですか・・・」
「それにしてもその手口は、酷い、酷すぎます・・(ノД`)・゜・。」

櫻井「国民生活センターもホームページで注意喚起を行っていますので、詳細は当該ホームページ(下記URL)を見られることをお勧めします。」

より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル-原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!-(発表情報)_国民生活センター


安武「畏まりました。それにしても、被害にあわれた相続人の方は『泣きっ面に蜂』と申しましょうか・・・原野商法の被害にあわれた被相続人の方も生前、家族の方にお話しできなかったお気持ちも分かりますし、何とも言葉が見つかりません・・・」

櫻井「おっしゃる通りでお話しを伺いますと、お気の毒でいたたまれない気持ちになります。」

安武「被相続人の書類を整理していたら、家族が知らない謎の『固定資産税納付書』や『不動産の権利証や売買契約書』がひょっこり発見されて初めて知るパターンなどですね・・・」

櫻井「はい、そのパターンが多いですね。」
「その書類の発見により被相続人が被害にあっていたことを初めて知りかなりショックを受けている状態でのさらなる被害は、金銭的喪失ダメージもさることながら相続人の方にかなりの精神的ダメージを与え何よりも辛いことになります。」

安武「トラウマ級ですよ・・」

櫻井「その点『相続土地国庫帰属制度』は、国が定めた条件をクリアすれば、国が引き取ってくれて、引き取り後は国が国有地として管理してくれるので安心な取引先となります。先程の悪徳商法を回避する手立ての1つとしてまずは、一度検討する価値はあると思います。      もちろん、手間暇の他、手続きや管理費名目で国への金銭的負担は発生しますが、金銭では測れない『心の安寧』を得ることも大切だと思います。」

櫻井「そもそも論になりますが、不動産などの高額なものをご購入される前には独断でお決めにならず、まずは『ご家族』や『専門家』などの第三者の意見をお聞きになってから取引をしていただきたいと願うばかりです。」

安武「御意のとおりです。」

安武「櫻井先生、本日はご多忙に関わらず長々と対談にお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。謹んで深く感謝を申し上げます。お蔭様で大変勉強になりました。機会を得ることができましたら、また是非対談にお付き合いいただけたら幸甚に存じます。」

櫻井「わたくしこそ、今日は誠にありがとうございました!」




あとがき

高度成長期には、「土地をも持っていれば損をすることはない」といわれた「土地神話」も「バブル崩壊」とともに過去の遺物となり、バブル景気の恩恵を享受していない世代である私にとっては、まったくご縁のないお話しだと、税理士になるまでは思っていました。

しかし、税理士となり相続関連の業務に関わらせていただく中で度々、「土地神話」の遺物が「失われた30年」の時を超えてゴーストのように現れ、諸問題の要因となっていることを目のあたりにすると「土地問題」の因縁の深さを考えさせられずにはいられません。

「土地神話」を体現した世代の世代交代の過渡期になっている現況において、それらに関わる問題がより顕著となって看過できない状態になるのではと危惧して仕方がありません。

それらの問題に巻き込まれるリスクを少しでも軽減するためには、やはり適切な「専門家」からの助言は欠かせないものであると今回の「櫻井司法書士との対談」で確信した次第でございました。

癒し系の素敵な先生でいらっしゃる櫻井麻衣先生には、ご多忙の中ご足労いただき有意義なお時間を賜りましたことを、改めまして謹んで深く感謝を申し上げます。