ワーク・ライフ・バランス


税理士界のトピックス
こんにちは、女性税理士の安武です。
世相は、新型コロナウィルス感染症が5月8日から5類に移行になるなど喧騒が絶えませんが、税理士界隈でも話題の事象がありました。
令和5年10月からスタートする消費税のインボイス制度も大きなメインではありますが、私的にはズバリそれは、税理士法改正による税理試験の受験資格要件の緩和です。

「税理士試験の受験資格要件の緩和」 - 日本税理士会連合会 (nichizeiren.or.jp)
要約しますと、従来の税理士試験には、「学識」「資格」「職歴」のいずれかの受験資格に該当しないと「会計学」も「税法」も受験することができませんでした。
しかし、令和4年税理士法改正により、令和5年度スタートの税理士試験から「会計学(簿記論と財務諸表論の2科目)」にいたっては受験資格要件の完全撤廃がされ「誰でも受験が可能」になったのです! もちろん、「税法」においても受験資格要件が緩和されました(詳細は添付URLを参照)が、会計学のこの受験資格完全撤廃は画期的で今回の税理士法改正の大きな「目玉」であり、税理士試験受験者減少対策への起爆剤と話題となりました。

税理士試験受験者の現状
そもそも税理士試験受験者が2005年(平成17年)の56,314人から逓減し直近の2022年(令和4年)では27,299人とピーク時の約半分まで減少してしまっていたのです!
改めてこの半減した数字を見ると凹みますし驚きますね・・・。
では、会計系の資格試験でよく比較される「公認会計士」試験の受験者の動向はどうなのでしょうか?受験方法に相違があるので一概に比較対象とするのは公平ではないかもしれませんが、2013年(平成25年)は9,984人で直近の2023年(令和5年)に至っては15,883人 と増加しているのです。
50%の減少と片や60%以上の増加。会計士試験には、受験資格要件はありませんが、同じ会計系資格でありながらなぜ税理士試験はこんなにも不人気なのでしょう? 市井では、AIより淘汰される職業だからとか言われていますが、それは公認会計士も例外ではないと思います。私が、この現象を「言い得て妙」だと感心した伝聞があります。
それは、「公認会計士試験をエベレスト登山になぞらえるなら税理士試験は標高3,000メール級の山を5回登山するようなもの」との言葉でなるほどと唸らずにはいられませんでした。
何故そのように思った理由を以下にて考察したいと思います。

税理士試験とは?
税理士試験の科目は、「会計科目(2科目)」と「税法科目(9科目)」の全11科目から構成されそのうち合計5科目に原則合格することが必要となります。 会計科目の「簿記」と「財務諸表論」は必須科目となり税法科目では「法人税法」又は「所得税法」のうち1科目は選択必須、あと3科目は一部の選択制限はあるものの任意選択となります。 もちろん一度に5科目を受験することも可能です。因みに1995年(平成7年)から2022年(令和4年)の27年間に5科目同時合格者は僅か2人とのことです。 まさに一般人の思考を遥かに超え(神レベル?)、よくぞ5科目同時受験を実行した事自体に驚嘆してしまいます!

公認会計士試験とは?
一方、公認会計士試験は、短答式試験及び論文式試験から構成され短答式試験合格者がロ論文式試験へ進むように実施されます。 短答式試験の受験科目は「財務諸表論」「管理会計論」「監査論」「企業法」の4科目からなり合格基準は総点数の70%となっています。 論文式試験の受験科目は「会計学(財務会計論・管理会計論)」「監査論」「企業法」「租税法」と選択科目の1科目(経営学・経学・民法・統計額)で5科目の総点数で合格基準は52%の得点比率となっています。 私の見聞では、公認会計士受験者は、受験専念の方が多く短期集中決戦型(受験期間は2~3年間が主流のようです。)のようだと感じました。 これらを勘案しますと、公認会計士受験はまるで全集中して一気にエベレスト登山するイメージに似ています。 巷では、この試験を挑戦するにあたり偏差値65以上の実力を要するともいわれています。

税理士試験に対する雑感
税理士試験に対する私の実体験では「努力が報われる」(学習量に比例して受験知識のクオリティーは磨かれます。)反面、5科目それぞれそれなりに負荷が重く合格点は60点以上とされていますが、絶対評価ではなく相対評価(公認会計士試験も同じ相対評価のようです。)の上位約10%を合格者とします。それ故にこれがかなり辛いのです。つまり、自分的には合格点に達していたとしても他の受験者も点数がよければ合格者にならない可能性があるのです。一旦合格した科目は一生有効なのですが、この科目合格を5回クリアするためのモチベーション維持がかなり辛かったのです。現実的には、税理士試験は年に1科目ずつ受験する方が(働きながら受験する方多いのも税理士受験者の特徴のひとつです。)多数でその様は上記の「言い得て妙」さながら一歩ずつ登山をするように思えました。1つの山をやっと登頂したと思いきや、また他の山を一から登るために気持ちの切り替えをしなければならずこれが中々難しいのです。 私見では、恐らくこの試験の特性(モチベーション維持が難しい)が「税理士試験」敬遠の大きな要因のひとつではないかと思うのです。

「石の上にも三年」(努力は必ず報われる)といいますが、長丁場の受験勉強も3年を経過しますと受験モードの陳腐化が現れ始めます。受験勉強に新鮮みを感じられず飽きてくるのです。初心のやる気に満ち溢れた気持ちは薄れ、色々な疑問が心に浮かんでは消えていきます。
私も例外なくこのまま勉強を継続しても来年も合格するのだろうか?など様々なネガティブ思考に駆り立てられ心が折れそうになりました。

そのような中、安武はどうやってここを乗り越えたのか?一言でいいますと「開き直り」の思考展開をしました。
ここでネガティブ思考に傾き、勉強を止めてしまうと自分の性格上後で自己嫌悪に陥りもっと後悔するだろうと思い直しそれぐらいなら結果は深く考えず自分のペースで一歩ずつコツコツ勉強しようと「開き直り」という名のもとの次の3つの心構えを実行したのです。

1.学習をルーティン化する
2.他人のことは気にせず自分のペースで
3.「次はない」との覚悟で試験を受ける


それぞれの心構えですが、まず「1.学習をルーティン化する」とは学習する癖をとにかくつけることでした。 そのため勉強時間を大きく割くことができる時期には、講義以外は敢えて専門学校の自習室へ足を運び午前9時から午後5時まで必ず勉強するということを習慣化するように努めました。 正直に言いますと自習勉強は自宅でもできるので、わざわざ専門学校の自習室へ行くために労力として「移動時間」と「交通費」を消費するのは一見無駄のように思えます。 しかし、ここが長丁場試験ゆえの「落とし穴」だと私は考えたのです。確かに自宅で自習勉強は、「時間」「お金」を節約できお得のようですが、勉強場所が自宅のため気が緩み進捗管理が甘くなり「いつでもできる」という安心感に陥ってしまいます。
すると、徐々に人は楽な方へと流れていき「受験勉強をして合格するぞ!」という心意気はいつの間にか色褪せ「大変で辛いと思う勉強」から遠ざかり、「大丈夫、いつでもできる」から「明日からはきちんとしよう」と次から次へと先延ばしをして「いつもしない」状態へと変化してしまうのです。

これは、私が初めて「簿記」と「財務諸表論」の講義を「時間」と「お金」を節約するためインターネット授業で受けたいと専門学校の先生に相談したところ「可能ならば専門学校でのライブ授業」を勧められその理由を聞くと上記の内容のように助言され私もその試しに漏れずの人間だと思い直した出来事を自習学習に踏襲したものです。 それに敢えて自習室で勉強をすることにより相乗効果として周りの方も熱心に勉強されていらっしゃる覇気を直に体感することができます。
そうすると「私も頑張ろう!」と自分自身を鼓舞するのでモチベーション維持に効果がありました。今でも、適切なご助言をして下さった専門学校の先生のお言葉は「金言」だったと有難くかつ深く感謝をしております。

次は「2.他人のことは気にせず自分のペースで」です。これは、勉強をしていると色々な噂を耳にすることがあります。 他の人の合否や点数などでつい自分と比較してしまい心が揺れマイナス思考になってしまいますが、人それぞれ顔形が異なるように置かれている勉強環境も違うのですから異なって当然なのだと割り切って考えるようにしたのです。 安易に自分と他人を比較しても意味がないという事を忘れずに自分のペースで「急がば回れ」精神でコツコツと歩み続ければ必ずゴールは見てくると考えると気が楽になりモチベーション維持になりました。 いくら猛ダッシュで駆け上がってもゴール手前で力尽きてしまえば「本末転倒」ですよね。だから自分のペースを守りながら着実がモットーに勉強を継続していきました。

最後は3.「次はない」との覚悟で試験を受けることです。
受験勉強の中途は本試験に向けて、小テストから定期テストまで様々な試験を受けます。これらのテストは、トライ&エラーを繰り返しながら知識を定着するための必要な道具です。 しかし、解らない場面にぶつかることも多々あり諦めたい気持ちと共にモチベーションが下がります。 その時は、今まで学習した内容の中に必ずヒントがあると気持ちを切り替えすぐに諦めないことを大切にしてきました。 そのことが、「次はない」との姿勢となり場面ごとの問題に真摯に向き合うことにつながります。 そのような姿勢の積み重ねは本試験でも、分からない問題を前にしても焦らず落ち着いた精神状態で試験時間を余すところなく使い受験に向き合うことができたのだと思います。

今改めと受験を振り返りみると、やはり「モチベーション維持」には、体力勝負もあります。 ですから、このような受験経験をしてきた者にとっては今回の「会計学」の受験資格要件完全撤廃は「税理士試験」の受験に1日でも早く参加ができるチャンスができたと感慨深く思ったのでした。
高卒である私は、受験資格を得るため「日商簿記1級」と「全経簿記上級」を勉強しなければならずそのため税理士試験の入り口に立つためまでにも大変苦労をしました。 だから門戸が広がることは「長期熟考型」試験により1日でも早く多様かつ優秀な方々が参加できこの業界をより活性化していただける可能性が高まる機会だと思いました。

もし、あなたが税理士試験へのチャレンジを考えていらっしゃるならまず「自分の置かれている環境の棚卸」をすることをお勧めします。
現状で、色々な工夫しても「時間(5科目なら平均2,500時間ぐらいの学習時間を必要とします)」と「お金(独学では困難なので専門学校での勉強が必要となり学費が発生します)」を調達することが可能か、 そして最後までやり遂げる「モチベーション」を維持できるかなどを色々な方に相談しながらしっかり考えていただけたらと思います。

女性税理士から見た税理士業界
改めて、税理士となり活動しますと、税理士業界は女性の割合が全体の約15%ですが、根気かつ細かい集中力を要する業務が多いので忍耐力に長けた女性には適職な職種だなと感じます。
さらに、職業訓練の簿記講師をしていますと訓練生は圧倒的に女性が優秀なことが多く驚かされます。その度に、会計は女性に向いている仕事だと再確認してしまいます。職業訓練校の門戸を叩く方の多くは、キャリアアップの為など様々事情な方がいらっしゃいますが彼らの真摯に努力する姿は、パワーがあり私はいつも元気を頂いています。

これからの分岐点について
さてそれらを踏まえて、女性視点からの日本経済を見ると、やはりまだ女性の年収が男性の年収より低い現状にあります。
令和3年度の民間給与実態統計調査によりますと、男性の平均年収は545万円に対して女性の平均年収は302万円と男性の年収の約55.4%しか収入を得ていないことに大きな驚きと衝撃を隠せません。 女性の活用重視が言われている昨今ですが、
男女の年収格差は「女性活用」の距離の遠さをものがたっているようです。
女性のライフスタイルは、複雑で多様です。
「仕事」「キャリアアップ」「シングル」「結婚」「子育て」「介護」「老後」など様々な選択肢の中で悩みは尽きません。しかし、それぞれの選択をするにあたっての考えの骨組みを支えるのはやはり「経済力」も重要な要素ではないでしょうか? 「経済力」の制約により人生の選択肢も制約されるのはとても寂しいですね。

もし女性の皆さんが、これからの「人生の選択肢」を少しでも広げるため「起業」等をお考えの時は、女性起業家の味方「女性税理士 安武貴美子」にご相談していただけたらと思います。 ご一緒に貴女の「ベストプラクティス」に寄り添い、そして何よりも女性の皆さんの「ワーク・ライフ・バランス」の彩りが豊かとなることを衷心より祈念してやみません。

では、貴女にお会いできることを心待ちにしております。