フリーランス必見!?


「フリーランス新法、
令和6年11月1日スタート」


~自由な働き方の未来は?
罰金50万円あり?
新法で仕事を守る方法~


フリーランス新法

フリーランス新法


2024年11月1日にフリーランスの取引に関する新しい法律がスタートします。これは、個人で働くフリーランスを保護する「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)のことです。
近年の働き方の多様化により増加している「フリーランス」に関するこの法律(以下「フリーランス新法」という)は、一体「フリーランス」という働き方にどのような影響を与えるのでしょうか?
フリーランス新法の内容を踏まえて

「フリーランス新法とは?」
「フリーランス新法は、下請法とは何が違うの?」
「フリーランス新法制定の裏に潜む、偽装フリーランス問題とは?」
などの疑問点を中心に「フリーランス新法」の中身を女性税理士の視点で概要を踏まえわかりやすく説明したいと思います。


※参考URL



女性税理士 安武 貴美子

【資格】
九州北部税理士会会員  税理士
ファイナンシャル・プランニング技能検定1級




1.フリーランス新法

1-1.フリーランス新法~誕生の背景~

フリーランスが安心して働ける環境整備の為に、令和6年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者取引適正化等法)が施行されます。
フリーランスとは、一般的に企業に属せず、従業員の雇用がない個人1人で事業を行う人を意味します。近年の働き方の多様化により、令和2年度に内閣官房が実施した調査では、462万人がフリーランスとして働いていると試算され、以後も増加傾向にあります。 業種や業態は、営業、講師、インストラクター、建設・現場作業、デザイン・コンテンツ制作、配送・配達など多種多様なものとなっています。
その一方で、個人として業務委託を受けているフリーランスと、組織として事業を行っている発注事業者の間には交渉力や情報収集力の格差が生じるやすく、それらを要因として問題が発生していることも現実です。 「弱い立場」に置かれやすい特性があるフリーランスですが、「下請法」では救済策を講じることが難しいことが、昨今の問題とされていました。
そのような問題の打開策として①取引の適正化②就業環境の整備を図ることを目的に、フリーランス新法が制定されました。





1-2.下請法との違いは?

公正取引委員会ホームページより

下請け法の概要

上記、図解を見て頂ければ分かるようにそもそも下請法による受託者の取引の公正と利益保護を図る為には、「仕事を依頼する事業者」と「仕事を受ける事業者」のそれぞれに『資本金』及び『取引内容』の制約があるため、今回のフリーランス新法の制定となりました。


下請け法の概要


1-3.フリーランス新法の内容は?

厚生労働省ホームページより


フリーランス新法の内容

上記、図解に基づき内容を見てみましょう!


<対象となるフリーランス>

フリーランス新法において保護の対象となるフリーランスは、「特定受託事業者」とされています。
この「特定受託事業者」の定義とは、業務委託の相手方である事業者であって企業に属さず個人で働く者だけではなく、従業員のいない法人(例えば、一人社長、マイクロ法人)も対象となっています。
また、業界や業種の限定及び年齢制限もありません。



<対象となる発注事業者>

フリーランス新法において規制の対象となる発注事業者は、「特定業務委託事業者」とされています。
この「特定業務委託事業者」の定義とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用し組織として事業を行うものとなります。


なお、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用しないものについては、「業務委託事業者」と定義し、取引条件の明示義務(図解・義務項目①)は課されます。

→つまりフリーランスが、フリーランスに業務委託する場合でフリーランス間の取引で課される義務は、この取引条件の明示義務のみとなります。



<対象となる取引>

事業者間(B to B)における委託取引が対象となり

で物品・情報成果物・役務の仕様・内容を指定してその製造や作成・提供を依頼することをいいます。


なお、下請法では対象外となる

場合も対象の取引となります。



<規制内容>

取引の適正化
(公取委・中小庁)

①書面等による取引条件の明示

②報酬支払期日の設定・期日内の支払い

③七つの禁止行為(受領拒否、返品等)


取引の適正化
(公取委・中小庁)

④募集情報の的確表示

⑤ハラスメント対策に係る体制設備

⑥育児介護等と業務の両立に対する配慮

⑦中途解除等の事前予告・理由開示

特定業務委託事業者に対して、①、②、④、⑤の義務が課されます。
特定業務委託事業者で、1カ月以上の業務委託である場合はが、6カ月以上の業務委託である場合は③、⑥、⑦の規制が加えられます。


なお、①から③は公正取引委員会中小企業庁が、④から⑦は厚生労働省が執行を担当します。

①、②、④、⑤、⑥、⑦は発注事業者に対する義務、③は禁止行為になります。



<規制内容の詳細>

①書面等による取引条件の明示

業務委託事業者(特定業務委託事業者を含む。)は、特定受託事業者(以下「フリーランス」という)に対し業務委託をした場合は、直ちに取引条件の内容などを書面またはメールなどの電磁的方法によって明示しなければなりません。
明示しなければならない取引条件は、大きく分けると次の9項目となります。



直ちに→とは『すぐに』という意味で、一切の遅れを許さないことをいうとされていますが、直ちに取引条件を明示できない正当な理由がある場合(客観的に認めらる理由)には例外規定があります。



②報酬支払期日の設定・期日内の支払い

特定業務委託事業者は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、報酬の支払期日を定めてそれまでに支払わなければならないとされています。

再委託の例外規定→元委託者から受けた業務の全部または一部を、特定業務委託事業者が特定受託事業者に再委託し、かつ、Ⅰ)再委託である旨Ⅱ)元委託者の商号、氏名もしくは名所又は事業者別に付された番号、記号その他の符号であって元委託者を識別できるもの及びⅢ)元委託業務の対価の支払期日を明示した場合、再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で定めることができるとされています。



③七つの禁止行為(受領拒否、返品等)

特定業務委託事業者が、特定受託事業者(フリーランス)に1カ月以上の業務委託をする場合、七つの禁止行為が定められています。
<七つの禁止行為>



④募集情報の的確表示

広告等により募集を行うときは、その情報について、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容を保たなければならないこととされている


例えば、意図的に実際の報酬額よりも高い額を表示など



⑤ハラスメント対策に係る体制設備

ハラスメント行為によりフリーランスの就業環境を害することのないよう、特定業務委託事業者は、相談対応のための体制設備その他の必要な措置を講じなければならないことされている
また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取り扱いをしてはならないとされている


ハラスメント行為には、セクシュアルハラスメント、妊娠、出産等に関するハラスメント、パワーハラスメントが含まれる


特定業務委託事業者に求められる相談対応の為の体制設備内容



⑥育児介護等と業務の両立に対する配慮

妊娠、出産、育児、介護等と業務を両立できるように、6カ月以上の業務委託について、フリーランスから申出があった場合、特定業務委託事業者は、必要な配慮をしなければならないこととされている


例えば、具体的な申出としては、「介護のため特定の曜日についてはオンラインで就業したい」など


この配慮義務は、特定業務委託事業者の申出に応じて、申出の内容を検討し、可能な範囲で対応を講じることを特定業務委託事業者に求めるものであり、申出の内容を必ず実現することまでを求めるものではない



⑦中途解除等の事前予告・理由開示

特定業務委託事業者は、6カ月以上の期間行う業務委託に係る契約を中途解除したり、更新しない場合には、フリーランスに対し少なくとも30日前までにその旨を予告しなければならないこととされている
また、予告の日から契約満了までの間に、フリーランスが契約の中途解除や不更新の理由の開示を請求した場合には、特定業務委託事業者は、これを開示しなければならない


なお、災害など例外事由に該当する場合は、予告は不要となる



1-4.フリーランス新法を違反したときは?

フリーランス新法において、特定業務委託事業者に課せられた義務に違反するような行為があった場合、違反行為を受けたフリーランスは、フリーランス・トラブル110番を経由するなどによって、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に今後設置される窓口に申告できるようになります。

その申告の内容に応じて、行政機関は、報告徴収・立入検査といった調査を行い、特定業務委託事業者に対して指導・助言・勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表ができます。

命令違反には、50万円以下の罰金となっています。


なお、フリーランス・トラブル番では



あとがき

近年の新型コロナウィルス感染症は、日本経済や働き方にパラダイムシフトを起こす大きな要因の1つとなりました。
働き方改革という働き方の多様性が唱えられる一方で、新型コロナウィルス感染症の影響は多くの会社の経営にマイナスの打撃を与えました。
その中で、会社側の経費削減の施策として行われた「偽装フリーランス」がクローズアップされ問題視されることになりました。


「偽装フリーランス」とは、契約上は「業務委託契約」という形を取りながら労働内容は雇用契約と相違はないのに労働環境は「フリーランス」という不安定な弱い立場の労働者を指します。


そのような劣悪環境に置かれた「フリーランス」の救済として制定されたのが「フリーランス新法」となります。
会社員兼フリーランスという「二足のわらじ」が浸透しつつ中、色々な根深い問題を抱えた「働き方改革」に「フリーランス新法」が明るい「働き方」の一石となることを願い私たちは、令和6年11月1日に産声を上げる「フリーランス新法」を注視しより良いものへ育てるためには時として声を上がることも大切になるのではないでしょうか?
そして、この新法を理解し、違反されないように自分自身を守るための準備を始めましょう!