緊急速報!?
「石破新総裁が動く!?
金融所得課税の行方」
~富裕層だけじゃない!金融所得課税で
一般投資家も痛手?~
2024年10月2日収集の臨時国会で、自民党の石破茂総裁が第102代の首相に選ばれ、新たな内閣が発足しました。
皆さんは、ご存知でしょうか?
今回の自民党総裁選では、株式の配当や売買にかかる金融所得課税強化の是非が争点のひとつになっていました。
その時に、候補者の河野太郎氏や小泉進次郎氏、小林鷹之氏は、石破茂氏が「金融所得課税」強化を唱えていたのに対して、反対の立場を強調していました。
という流れから「石破茂内閣総理大臣」が誕生したことにより、「金融所得課税」強化が加速されるのではと巷では騒然となっている状況です。
「そもそも、金融所得課税とはどんなものなの?」
「金融所得課税は、富裕層のみの問題で一般庶民は関係ないのでは?」
などの疑問点を中心に「金融所得課税」強化の行方について女性税理士が概要を踏まえてわかりやすく説明したいと思います。
※参考URL
女性税理士 安武 貴美子
【資格】
九州北部税理士会会員 税理士
ファイナンシャル・プランニング技能検定1級
日本の所得税の税率は「超過累進税率」(税率は、5%~45%)といって、「公平な税負担」や「富の再分配」という考えのもと所得が大きいほど税負担が大きくなるようになっています。
ところが、下記の表(東京財団政策研究所HPより抜粋)を参照していただきますと
税負担率は合計所得金額が増えるほど高くなるのですが、所得金額1億円の納税者の26.32%をピークに右肩下がりになっています。
これを俗に「1億円の壁」といいます。
つまり、これは所得金額が1億円を超える超富裕層の所得の多くを※1)金融所得が占めており、税率は超過累進課税率より低い※2) 15.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%)の税率でしか課税されていない現象を表しています。
よって、「課税の公平」の観点から超富裕層への課税の強化(増税)をするべきとの意見の流れとなり、その実現として「金融所得課税」改正へと展開することになったのです。
※1)金融所得とは、投資信託・株式・預金などの金融商品から発生する所得を言います。
例えば、株式や投資信託などの場合は、配当金や譲渡時の利益になります。
※2) 別途、金融所得には、「住民税10%」が課税されます。
2025年開始の金融所得課税ですが、正式名称は「特定の基準所得金額の課税の特例(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)」と言います。
しかし、正式名称が長いため一般的に「超富裕層ミニマム税」や「ミニマムタックス」と呼ばれることが多いようです。
その中身ですが、下記の財務省の「令和5年税制改正の大綱」から該当箇所を参照してみましょう。
↓
Ⅰ 令和5年税制改正
一 個人所得課税
2 極めて高い水準の所得の所得に対する負担の適正化
(国 税)
(1)その年分の基準所得金額から3億3,000万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額がその年分の基準所得税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税を課する措置を講ずる。
(注1)上記の「基準所得金額」とは、その年分の所得税について申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額(その年分の所得税について適用する特別控除額を控除した後の金額)をいい、「基準所得税額」とは、その年分の基準所得金額に係る所得税の額(分配時調整外国税相当額控除及び外国税額控除を適用しない場合の所得税の額とし、附帯税及び上記(1)により課す所得税の額を除く。)をいう。
(注2)上記(注1)の「申告不要制度」とは、次に掲げる特例をいう。
①確定申告を要しない配当所得等の特例
②確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得の特例
(注3)上記(注1)の合計所得金額には、源泉分離課税の対象となる所得金額を含まないこととする(NISA制度及び特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例において非課税とされる金額も含まない。)。
(2)上記(1)の適用がある場合の所得税の確定申告書の記載事項を定めるほか、所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。
つまり、今回の改正は、「基準所得金額(源泉分離課税・NISA・エンジェル税制による非課税は除外)」から「3億3,000万円」を引いた金額に22.5%税率を掛けて算出した金額が、基準所得税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税を納税しなさいとのことを言っていることになります。
★では、事例でシンプルに見てみましょう!
前提 A氏 1年間の所得金額は10億円で税率は15%(所得税のみ)とする
(「金融所得」のみで申告不要を選択)
①納税額
10億円×15% = 1億5,000万円
②ミニマム税
(10億円-3.3億円)×22.5% = 1億5,075万円
③ ①<② ∴超富裕層ミニマム税適用
②-①=75万円 追加納税
日本の超富裕層ミニマム税の仕組みは、米国の「投資純利益税」を参考にし、税率22.5%は、所得税の最高税率45%の半分を前提としているようです。
日本の富裕層及び超富裕層の定義は、それぞれの純金融資産保有額が1億円以上5億円未満、5億円以上とされています。
よって、超富裕層ミニマム税の対象者は、金融所得のみだと10億円以上、その他の所得もある場合は30億円以上の所得がある人々であり、日本でのターゲットは300人程度ではないかと推測されます。
財務省のシンクタンクとして関わりの深い「東京財団政策研究所」から発表されている論文「いまさら聞けない金融所得課税(1億円の壁)」2024.9/20 主任研究員 岡 直樹氏(財務省主税局に勤務)より一部抜粋
金融所得課税の税率の変更ではないが、令和5年度税制改正で導入され、令和7年(2025年)から実施される「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」(いわゆる富裕層ミニマム税)は、巧妙な政策パッケージによる富裕層課税についての税制改正の成功例と言って良いと思う。この年の税制改正の目玉はNISA(少額投資非課税制度)の大幅拡充・恒久化であり、課税強化に対する市場関係者からの声高な批判は封じられた。 また、保有する株式を売却してスタートアップの未上場ベンチャー企業に再投資した場合、譲渡益について20億円まで非課税とする大胆な措置を創設したことにより、金融所得課税がイノベーションの芽を摘む、といった批判も先回りして封じ込めてしまった。
つまり財務省は
という思惑の下、※3)NISA恒久化の交換条件とした「金融所得課税」(超富裕層ミニマム税)の導入となったのです。
※3)
つまり、「金融所得課税」の導入の初期段階では、ごく少数の対象者(超富裕層)としながら、それを足がかりとして将来は徐々に「金融所得課税」を強化して、対象者を拡大して増税をする方針へ移行することを狙いとしていると思われます。
では、「金融所得課税」強化の将来像はどのようになるのでしょう?
現時点では、まだ詳細は不明ですが、以下の2つが大枠の増税路線と考えられます。
未来予測①基準所得金額から控除する金額を減額する(ミニマム税の対象者を拡大する)
現時点では,基準所得金額から控除する金額は3億3,000万円ですが、この金額を徐々に2億円、1億円、5,000万円と減少させて増税をする。
事例)
・2025年→
①10億円×15%=1億5,000万円
②(10億円‐3.3億円)× 22.5% = 1億5,075万円
③ ①<② ∴超富裕層ミニマム税適用
②-①=75万円
・20XX年→
控除する金額を5,000万円にする(あくまで予想値)
①10億円×15%=1億5,000万円
②(10億円‐5,000万円)× 22.5% = 2億1,375万円
③ ①<② ∴超富裕層ミニマム税適用
②-①=6,375万円
よって、6,300万円の増税
未来予測②金融所得に課する税率を上げる(金融投資する人を対象とする)
金融所得に課する税率は、現在は15%(所得税)ですが、この税率自体を20%などにする
事例)金融所得を5,000万円とする
・2024年→
10億円×15%=1億5,000万円
・20XX年→
所得税の税率20%にする(あくまで予想値)
10億円×20%=2億円
よって、5,000万円の増税
上記事例は、「金融所得課税」強化を分かり易くするためにシンプルな数字にしていますが、
①よりも②の増税路線の方針にする方が、増税の対象者を広く捕捉することができトータル的により多くの税金を徴収することができると考えます。
つまり、「超富裕層」だけではなく、金融投資をして金融所得を得る人々全体が対象者となることを意味しています。
前岸田政権は、日本国民の「資産所得倍増計画」の名の下、「貯蓄から投資へ」とのスローガンを掲げ「金融投資」推奨の起爆剤として新NISAを打ち出しました。
しかし、その裏側では、虎視眈々と税制改正により「金融所得課税」の強化を図るという政策を行っています。
恐らく現政権もこの路線を踏襲すると考えられますので、「金融所得課税」の動向には注視が必要です。
現代は、事象が複雑に絡み合いかつ多様性が進み一つの切り口だけでは、各々の事情を踏まえた正義を測ることは極めて難しい状況となってきています。
その中で、私たちは「税金」という「社会正義」の義務を履行することにより、平和かつ安全な日本の国を保全しながらも、臨機応変に多くの情報を取捨選択しつつその意図を分析して自分の将来像を考えなければならない厳しい岐路に立っているのではないでしょうか?
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