「2025年の遺族年金改正で家計破綻!?」
~男女平等化の裏に潜む危機・・・
あなたの老後資金が消える日~
内容をFP資格も持つ女性税理士が
わかりやすく説明
2024年7月30日、世間はパリオリンピックの喧騒の中、衝撃的なニュースが放送されました!
「遺族厚生年金、5年間で給付打ち切り?中高齢寡婦加算も廃止か?」
2024年7月30日、厚生労働省第17回社会保障審議会年金部会にて、2025年の5年に1度の年金改正のため、国家審議予定の「遺族年金制度等の見直し案」が提出されました。
その衝撃的な内容に巷は騒然となりましたが、一体どのような改正案なのでしょうか?
日本の遺族年金制度は複雑ですが、この度の改正案に焦点を当てFP資格を有する女性税理士がシンプル(概要)にわかりやすく説明したいと思います。
※下記、第17回社会保険審議会年金部会 2024年7月30日 資料4に基づき解説
※下記、第17回社会保険審議会年金部会 2024年7月30日 資料4に基づき解説
※参考URL:年金制度の仕組みと考え方_第13_遺族年金 (mhlw.go.jp)
女性税理士 安武 貴美子
【資格】
九州北部税理士会会員 税理士
ファイナンシャル・プランニング技能検定1級
日本の「遺族年金」は、「公的年金制度」の一部であり、「遺族の生活を支える」為に設けられています。
そこで、公的年金制度のおさらいをしてみましょう!
日本の公的年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と会社員や公務員の方が加入する「厚生年金」の2階建て構造になっています。
つまり会社員と公務員の方は二つの年金制度に加入していることになります。
また3階部分として企業が任意で設立し社員が加入する企業年金や国民年金の第一号被保険者が任意で加入できる国民年金基金などがあります。
現在の日本の年金制度には、老齢年金・障害年金・遺族年金の3種類があります。
老齢年金(課税対象)は、20歳から60歳までの間に一定期間、通常は十年以上保険料を支払っていれば受け取ることができます。
基本的には、65歳から一生涯受け取れますが、特定の条件を満たせば60歳から前倒しであるいは70歳まで遅らせて受け取ることも可能です。
前倒しの場合は減額され、遅らせると増額されます。
受給額は、支払った保険料や加入期間に応じて計算されます。
次に障害年金(非課税)についてですが、障害年金は病気や事故で障害を負ったときに支給される年金です。
障害の原因となった病気や怪我が発生した時点で、一定期間の保険料を支払っていることが条件です。
また障害の程度が、一定の基準である1級2級等に該当する必要があります。
障害年金は、国民年金の方は障害基礎年金、厚生年金の方はそれに加えて障害厚生年金の2種類を受けられる形になっています。
障害基礎年金の場合一定の基礎額が支給されます。
障害厚生年金は、働いていた期間や収入障害の等級によっても異なります。
そして遺族年金(非課税)は、家族の生計を支えていた方が亡くなった時にその遺族に支給される年金です。
亡くなった方の年金の加入状況などに応じた金額の年金が支給されます。
今回の主なテーマである遺族年金の改正を前提として、現在のルールを少し詳しく説明して行きます。
まず遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。
亡くなった方が自営業者等で国民年金のみに加入していた場合、その遺族には遺族基礎年金が支給されます。
一方亡くなった方が会社員や公務員などで厚生年金に加入していた場合、その遺族には遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されます。
支給パターンには、
4パターンがあります。
次に、それぞれの支給対象の方について見ていきましょう。
国民年金では、亡くなった方の収入で生計を維持されていた遺族に遺族基礎年金が支給されます。
具体的には、子のある配偶者若しくは、その子です。この「子」というのは18歳になった年度の3月31日までにある方のこと又は、障害を持っている方の場合は20歳未満まで延長されます。
受給条件は、亡くなった方が一定期間保険料を支払っていることです。
死亡日の前日において死亡日の月の前月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて全被保険者期間の2/3以上が必要です。
受給額は子の数によって変わります。
例えば、令和6年4月分から昭和31年4月2日以後生まれの方で子のある配偶者ですと、
816,000円プラス子の加算額になります。
この加算額は1人目および2人目の子は各234,800円、3人目以降は各78,300円です。
子のみが支給対象者の時は、この合計額を子の人数で割った値が1人当たりの額となります。
厚生年金では、亡くなった方の収入で生計を維持された遺族に遺族厚生年金が支給されます。
受け取ることができる遺族は配偶者・子・父母(55歳以上)・孫(子の定義適用)・祖父母(55歳以上)です。
受給条件としては、亡くなった方が一定期間厚生年金に加入していたことが必要です。
また850万円以上の年収がある場合は支給されません。
受給額は、亡くなった方の平均標準報酬月額や加入期間に基づいて計算されます。
具体的には、亡くなった方の厚生年金の報酬比例部分の3/4が支給されます。さらに遺族基礎年金と合わせて受給する場合もあります。配偶者が受け取る場合は、遺族厚生年金は一生涯受け取ることができます。
ただし配偶者が、30歳未満の子のいない妻の場合は5年間の有期年金になります。
理由は、30歳未満はまだ若いので就労支援に重点を置く方が望ましいからといわれています。
ところで支給対象者の優先順位はどうなっているのでしょうか?
遺族基礎年金の支給の対象は、子のある配偶者若しくはその子です。
子のある配偶者と子がいる場合は、配偶者に、子だけの時は子に遺族基礎年金が支払われます。
遺族基礎年金の大きなポイントは、子がいないともらえないことです。
ですので、配偶者のみの場合は支給されません。
一方、遺族厚生年金の対象者は広くなっています。
生計維持要件を満たす遺族の中で最も優先順位の高い方に支給されます。
遺族厚生年金は受給するにあたって遺族基礎年金と違い、「子の有無」は関係ありません。 優先順位の高い方から、「子のある配偶者」→「子」→「子のない配偶者」→「父母」→「孫」→「祖父母」となります。
つまり、亡くなった方が厚生年金に入っていた場合、子のある配偶者又は子は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れます。よって、子ない配偶者・父母・孫・祖父母が受取人になる場合は、遺族厚生年金のみを受け取ることになります。
※因みに、遺族年金の受給権の消滅の事由のひとつに、配偶者は「婚姻したとき(内縁関係も含む)」つまり「再婚」した場合は、遺族年金はもらえませんのでご留意ください。
遺族年金のルールはここまでも十分に複雑なのですが、この制度の大きなポイントは同じ配偶者であっても受取人が妻であるか夫であるかによっても受け取れる金額は大きく変わってきます。
改正案の論議の焦点を踏まえて、現在の遺族厚生年金の、問題点を図解で見てみましょう。
まず亡くなった方が、厚生年金に入っていた方で受取人とし、子は「子の定義」の対象外であるとする40歳の配偶者(妻)の方の場合を考えます。
遺族年金として支給されるのは、「遺族厚生年金」と「中高齢寡婦加算」となります。
妻の場合は、中高齢寡婦加算というものを遺族厚生年金に上乗せして受け取ることができます。中高齢寡婦加算(女性のみ)は令和6年時点で年額612,000円となり月額にすると51,000円です。これは、40歳から65歳になるまでの間「遺族厚生年金」に加算されます。
一方夫は、妻が亡くなった時にそもそも55歳以上でなければ遺族厚生年金は支給されません。
そして55歳以上であっても原則60歳以降に遺族厚生年金の支給となります。
つまり妻の死亡時に夫が55歳未満だった場合は、支給額はゼロ円となりもらえません。
もちろん、「中高齢寡婦加算」の手当もありませんから、女性と比較して男性の場合は、同じ遺族でありながら、かなり厳しい制度となっています。
<見直しの意義>
女性の就業の進展、共働き世帯の増加等の社会経済状況の変化や制度上の男女差を解消していく観点を踏まえて、遺族厚生年金を見直します。
<見直しの方向性>
◆20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金を、配偶者の死亡といった生活状況の激変に際し、生活を再建することを目的とする5年間の有期給付と位置付け、年齢要件に係る男女差を解消することを検討します。
◆現在、妻が30歳未満に死別した場合に有期給付となっている遺族年金について、適切な配慮措置を講じた上で、30歳以上へと対象年齢の引上げを徐々に行うことにより、20代から50代に死別した子のない妻に対する遺族厚生年金の見直しを行います。引上げの施行に当たっては、現に存在する男女の就労環境の違いを考慮するとともに、現行制度を前提に生活設計している者に配慮する観点から、相当程度の時間をかけて段階的に施行することとする。男性については、こうした女性の対象見直しと合わせて、給付対象となる年齢を拡大します。
◆なお、養育する子がいる世帯としてみた場合の遺族厚生年金、高齢期の夫婦の一方が死亡したことによって発生する遺族厚生年金については、現行制度の仕組みを維持します。
※施行日前に受給権が発生している遺族厚生年金については、現行制度の仕組みを維持します。
そもそも遺族年金の背景は、働き盛りの夫が先に死んだ場合に、残された妻は生活ができないということで家計を支える夫を亡くした妻への所得補償として遺族年金がスタートしました。
しかし、時代背景の変化とともに共働きの世代も増え、共稼ぎだと遺族年金がもらえないと言う方も結構増えてきました。その場合は非常に不公平という世相を踏まえて厚生労働省の審議会は、この男女平等の世の中で妻だけが有利な制度に疑問を呈しこのような検討が進められてきました。
この度の改正案の衝撃は、現行制度では、遺族厚生年金が無期給付される人々(主に扶養範囲以内でパートなどしていた主婦)が、「5年間の有期給付」へシフトされることにあります。
厚生労働省は、改正案移行への配慮措置として、
① 現行制度の離婚分割を参考に、死亡者との婚姻期間中の厚年期間に係る標準報酬等を分割する死亡時分割(仮称)の創設を検討する。これにより、分割を受けた者の将来の老齢厚生年金額が増加する。
② 収入850万円未満の収入要件の廃止を検討する。これにより、有期給付の遺族厚生年金の受給対象者が拡大する。
③ 現行制度の遺族厚生年金額(死亡した被保険者の老齢厚生年金の4分の3に相当する額)よりも金額を充実させるための有期給付加算(仮称)の創設を検討する。これにより、配偶者と死別直後の生活再建を支援する。
と示していますが、現行制度(所得補償)から改正案(生活再建)への緩衝材となるのか疑問に感じずにはいられません。
遺族年金制度等の見直しについてより抜粋した下記資料をご参照ください。
今回の改正案の真の狙いは、「男女平等」という名の下、主に
1)膨大な遺族厚生年金(赤い丸印)の支給額の「圧縮」と
2)遺族厚生年金の受給を失った人々を労働者不足な社会へ流動させて誘導するためと考えます。
働き手である夫の会社員の方が入っている厚生年金は、その配偶者は第三号被保険者として国民年金に無料で入れます。しかし、その夫が亡くなると、その配偶者は自分で自分自身の国民年金(令和6年度時点、年間203,760円)を負担しなければなりません。
そして、今回の改正案により「遺族厚生年金」が5年間で打ち切りとなるとかなり経済的な負担が押し寄せてくることは想像に難くないと思います。
複雑な諸事情により専業主婦にならざる得ない方々もいらっしゃる中、今回の改正案を前に、「異次元的少子化対策」などと謳っても安心して子育てができるのか不安の要素になるのではないでしょうか?
そして現実問題として男女の賃金格差はありますので、この十数年の間に男女の賃金格差をどうやって埋めていくのかということも深刻な課題であります。
SNSのX(旧Twitter)において今回の改正案について政治家の片山さつき氏は、
「男女の給与格差が先進国1(位)なうちは、優遇制度も必要! まずは女性に正当な給与水準増を、というのが政治の本筋です。」(一部抜粋)と投稿されていらっしゃいます。
当該片山さつき氏の投稿は、まさに今回の改正案の問題点の核心を言い得て妙だと思わずにいられません。
現時点においては、当該「改正案」は決定事項ではありませんが、相当期間をかけて段階的に改正案の制度へ「遺族厚生年金」が移行する可能性は高いと思われます。
将来のリスク(不確定要素)に向けて今わたしたちができることは、自分の人生に関わる情報を正確にキャッチしてしっかり向き合い、次の一手としてそのリスクを軽減するべき行動を起こすことではないでしょうか?
将来への収入を増やすために、2足のわらじとして副業や事業などの経済活動を始めることもリスク軽減となります。
経済活動を始めると、必然的に会計や税金の知識も必要となりますので、当該内容に関する「お困りごと」がございましたら、気軽に弊社「安武貴美子税理士事務所」へご相談ください。
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