農業大学校臨時簿記講師がわかりやすく説明

某日に、某農業大学校の準教授のオファーにより「農業簿記」の臨時講師を賜りました。
準教授より
「実は、卒業生からのヒアリングにより在学中に学びたかった知識のリクエストで最も多く寄せられたのが簿記でして・・・」
とのことで、この度有難く「白羽の矢」を立て頂いた次第です。
なるほど・・

わたくし「井の中の蛙」ですが、知見により思うところがあり拝受させていただきました。

マネーリテラシーなくして人生の経済的豊さは実現できません！！

「農業簿記」というアイテムは、これかのあなたの人生という名の冒険に役に立つ知識です！
その一歩として是非とも一緒に「農業簿記」を学びましょう！
まずは初めの一歩さえ踏み出せば、あとは「継続は力なり」ですよ！

では、Let’s try (=ﾟωﾟ)ﾉ

冒険のはじまり～、はじまり～♪

ズバリ「農業簿記」とは、農業者が一定期間において生物（植物、動物）を生産して販売する経済活動を一定の記録方法で帳簿に記録し、計算・整理集計し経済活動の結果を明らかにする計算制度です。

正しい記録に基づき、正しい計算と集計により一定期間の経営成績（損益計算書）を明らかにすること、一定時点の財産状態（貸借対照表）を明らかにすることです。
そして、損益計算書と貸借対照表の数字に基づいて農業経営の分析や原価計算の把握を通して改善を図り農業経営の発展に寄与することと税務申告を行うことにあります。

個人農業者の一定期間を1月1日から12月31日までの1ヶ年とし、この一定期間のことを「会計期間」といいます。

経営成績とは、一定期間の営業活動によって得た「利益」または「損失」がどうのようにして、いくら生じたかをいいます。
その過程を明らかにした書類が「損益計算書」です。
つまり、収益から、その収益を得るために犠牲となった費用を差し引くことによって明らかにされる差額を「当期純利益」といいます。

　財政状態とは、投下した資金（元入金）の調達源泉の状態（誰から？どのよう方法で？など）と、その資金をどのように使っているかという資金の運用状態をいいます。

• 取引とは、「資産・負債・純資産・収益・費用が増減することがら」
• 勘定とは、取引の内容を記録・計算する単位
• 勘定の左側を「借方」、勘定の右側を「貸方」という
• 仕訳とは、取引が生じた都度、適切な勘定科目と金額を決定し、借方（左側）と貸方（右側）に区別すること

1.基本ポジション

2.考え方

資産は本来「借方」の項目、負債・純資産は本来「貸方」の項目
収益は本来「貸方」の項目、費用は本来「借方」の項目

この基本の形から、【資産・負債・純資産・収益・費用】の増減を「借方」と「貸方」に分けると下記のとおりになる。

※増減は「＋」か「－」で表し、グレー色は基本ポジション。

①取引の二重性 
取引は、必ず「借方」と「貸方」の２面において変動を引き起こす

②貸借平均も原理 
どのような取引であっても、借方の金額が合計と貸方の金額合計は必ず一致する

• 転記とは、仕訳を各勘定科目ごとに勘定口座へ書き移すこと

上記の仕訳を転記すると

• 仕訳帳とは、経済的取引を時系列の発生順に記録する帳簿

※事例

【Ａ】
→ページ欄. ページ番号を記入

【Ｂ】
→日付欄. 取引の発生日付を記入

【Ｃ】
→元丁欄. 元帳へ転記した後に、転記した元帳の勘定口座のページ数又は勘定科目につけた番号を記入

【Ｄ】
→摘要欄. 左側に借方科目、右側に貸方科目を記入
勘定科目が2つ以上ある場合は、「諸口」
　　下の行には、取引の内容を簡単に記入（これを小書きという）

【Ｅ】
→借方欄.貸方欄.勘定科目を記入した行と同じ行に借方、貸方それぞれの金額を記入

• 総勘定元帳（又は元帳）とは、すべての勘定口座を集めた帳簿

※「残高式」を前提の事例

　4/5　　現金　350,000 / 借入金　350,000
　4/20　種苗費　100,000 / 現金　100,000

【Ａ】
→口座番号. 各勘定口座の一連のページ数を記入

【Ｂ】
→日付欄. 仕訳の日付を記入

【Ｃ】
→摘要欄. 相手勘定を記入、相手勘定が2つ以上あるときは「諸口」と記入

【Ｄ】
→仕丁欄. 仕訳帳のページ数を記入

• 取引を正確に処理するために、仕訳帳と併用して「伝票」が使用される

・１伝票制→「振替伝票」

・３伝票制→「入金伝票」、「出金伝票」、「振替伝票」

・５伝票制→「入金伝票」、「出金伝票」、「振替伝票」、「仕入伝票」、「売上伝票」

※サンプル

• 主要簿とは、すべての取引をその発生順に記録した帳簿であり、仕訳帳と総勘定元帳をいう（必ず作成しなければならない）
• 補助簿とは、主要簿の記録だけでは十分でない場合に必要に応じてこれを補うために作成される帳簿である

• 試算表とは、仕訳帳から総勘定元帳への転記の正確性を検証するため、「貸借平均の原則」を利用して作成する集計表

【事例】

• 計上時期

• 農業の収益

①売上取引（米、麦、野菜など）

②売上割引

• 農業の費用

①　種の仕入取引

種苗費  50,000 / 買掛金  50,000

②　賃金の支払い

賃金手当  80,000 / 現金  80,000
（農作業の現場に従事する人へ支払うもの）

給料手当  120,000 / 現金  120,000
（販売管理などの事務作業に従事する人への支払いもの）

③　草刈機の購入

　農具費  75,000 / 未払金  75,000

④ 修繕費の支払取引

修繕費  89,000 / 未払金 89,000

⑤ 借入金の元金と利息の支払取引

借入金  100,000 / 普通預金  102,000
支払利息  2,000

• 現金預金

• 売掛金

• 棚卸資産

• その他の流動資産

• 減価償却資産

• 育成仮勘定

　＜ポイント＞

　農業簿記3級の合格の秘訣は、

　とにかく「過去問題」を反復的に解くことです！！

　その為には、「仕訳」の考え方を身に付けよう！！

農業簿記3級 仕訳問題

【仕訳問題 1-10】

1. 種子代5,000円を現金で支払った。
2. 農作物を10,000円で現金販売した。
3. 農業機械の修理費20,000円を銀行振込で支払った。
4. 肥料代30,000円を掛けで購入した。
5. 買掛金の支払いとして30,000円を現金で支払った。
6. 作物の販売代金50,000円を小切手で受け取った。
7. 小麦の種子代15,000円を現金で支払った。
8. 出荷した作物の代金80,000円が普通預金に振り込まれた。
9. トラクターの購入代金100,000円を分割払いとし、初回支払として20,000円を現金で支払った。
10. 飼料代5,000円を現金で支払った。

【仕訳問題 11-20】

11. 出荷に伴う運賃8,000円を現金で支払った。
12. 農地の賃貸料20,000円を現金で支払った。
13. 作物の保険料15,000円を現金で支払った。
14. 農業機械の部品代10,000円を掛けで購入した。
15. 買掛金10,000円を現金で支払った。
16. 売掛金50,000円を銀行振込で受け取った。
17. 農業資材の運送費として5,000円を現金で支払った。
18. 飼料費10,000円を現金で支払った。
19. 収穫した作物を50,000円で販売し、代金は後日受け取ることとした。
20. 販売代金80,000円が普通預金に振り込まれた。

【仕訳問題 21-30】

21. 農業用倉庫の修理費として30,000円を現金で支払った。
22. 銀行からの借入金100,000円を普通預金に入金した。
23. 農業用トラックの燃料費5,000円を現金で支払った。
24. 作物の出荷代行費20,000円を銀行振込で支払った。
25. 買掛金20,000円を普通預金で支払った。
26. 農業用肥料15,000円を掛けで購入した。
27. 肥料代の支払いとして15,000円を現金で支払った。
28. 農業用機械の点検費用として5,000円を現金で支払った。
29. 保険料20,000円を現金で支払った。
30. 作物を70,000円で掛け売りした。

【仕訳問題 31-40】

31. 得意先からの掛け代金50,000円を普通預金に入金した。
32. 農業資材10,000円を現金で購入した。
33. 作物を100,000円で販売し、代金は後日受け取ることとした。
34. 農業用倉庫の賃貸料30,000円を銀行振込で支払った。
35. 銀行借入金の利息5,000円を普通預金で支払った。
36. 買掛金40,000円を現金で支払った。
37. 売掛金80,000円が普通預金に振り込まれた。
38. 農業用トラクターの燃料費3,000円を現金で支払った。
39. 貸付金50,000円を現金で返済した。
40. 倉庫の修繕費として15,000円を現金で支払った。

【仕訳問題 41-50】

41. 出荷代行費として20,000円を普通預金から支払った。
42. 銀行からの借入金の一部50,000円を現金で返済した。
43. 農業用地の賃貸料60,000円を現金で支払った。
44. 収穫した作物を20,000円で販売し、代金は現金で受け取った。
45. 肥料代12,000円を普通預金で支払った。
46. 農業用機械の部品代10,000円を掛けで購入した。
47. 支払利息8,000円を普通預金で支払った。
48. 農業用倉庫の賃貸料40,000円を現金で支払った。
49. トラクターの修理費5,000円を掛けで支払った。
50. 作物を70,000円で販売し、代金は後日受け取ることとした。

解答一覧

【仕訳問題 1-10】

1. （借）肥料費 5,000 ／（貸）現金 5,000
2. （借）普通預金 50,000 ／（貸）売上 50,000
3. （借）修繕費 20,000 ／（貸）現金 20,000
4. （借）飼料費 30,000 ／（貸）買掛金 30,000
5. （借）買掛金 30,000 ／（貸）普通預金 30,000
6. （借）現金 60,000 ／（貸）売上 60,000
7. （借）売掛金 80,000 ／（貸）売上 80,000
8. （借）車両運搬具 100,000 ／（貸）現金 100,000
9. （借）種苗費 10,000 ／（貸）現金 10,000
10. （借）運賃 5,000 ／（貸）現金 5,000

【仕訳問題 11-20】

11. （借）賃借料 40,000 ／（貸）現金 40,000
12. 借）売掛金 10,000 ／（貸）売上 10,000
13. （借）修繕費 20,000 ／（貸）現金 20,000
14. （借）農業機械 50,000 ／（貸）買掛金 50,000
15. （借）買掛金 30,000 ／（貸）現金 30,000
16. （借）普通預金 50,000 ／（貸）売掛金 50,000
17. （借）肥料費 20,000 ／（貸）現金 20,000
18. （借）運賃 8,000 ／（貸）現金 8,000
19. （借）現金 50,000 ／（貸）売上 50,000
20. （借）普通預金 50,000 ／（貸）借入金 50,000

【仕訳問題 21-30】

21. （借）修繕費 10,000 ／（貸）現金 10,000
22. （借）売掛金 50,000 ／（貸）売上 50,000
23. （借）買掛金 20,000 ／（貸）普通預金 20,000
24. （借）種苗費 15,000 ／（貸）現金 15,000
25. （借）売掛金 80,000 ／（貸）売上 80,000
26. （借）賃借料 20,000 ／（貸）普通預金 20,000
27. （借）燃料費 5,000 ／（貸）現金 5,000
28. （借）支払手形 30,000 ／（貸）現金 30,000
29. （借）肥料費 30,000 ／（貸）普通預金 30,000
30. （借）修繕費 50,000 ／（貸）買掛金 50,000

【仕訳問題 31-40】

31. （借）燃料費 3,000 ／（貸）現金 3,000
32. （借）賃借料 25,000 ／（貸）現金 25,000
33. （借）普通預金 80,000 ／（貸）売掛金 80,000
34. （借）肥料費 20,000 ／（貸）買掛金 20,000
35. （借）運賃 10,000 ／（貸）普通預金 10,000
36. （借）借入金 100,000 ／（貸）現金 100,000
37. （借）修繕費 5,000 ／（貸）現金 5,000
38. （借）保険料 10,000 ／（貸）普通預金 10,000
39. （借）普通預金 60,000 ／（貸）売掛金 60,000
40. （借）農業機械 100,000 ／（貸）買掛金 100,000

【仕訳問題 41-50】

41. （借）修繕費 30,000 ／（貸）普通預金 30,000
42. （借）借入金 50,000 ／（貸）現金 50,000
43. （借）肥料費 15,000 ／（貸）買掛金 15,000
44. （借）種苗費 5,000 ／（貸）現金 5,000
45. （借）賃借料 20,000 ／（貸）現金 20,000
46. （借）売掛金 100,000 ／（貸）売上 100,000
47. （借）支払利息 3,000 ／（貸）普通預金 3,000
48. （借）運賃 15,000 ／（貸）現金 15,000
49. （借）買掛金 40,000 ／（貸）現金 40,000
50. （借）保険料 20,000 ／（貸）現金 20,000

以上が、農業簿記3級仕訳問題50問の解答です。これらの問題を練習することで、試験に向けた準備を整えることができます。